東北マニュファクチュール・ストーリー
東日本大震災の発生から約2年。実は最近、被災地で地元の女性たちが中心になって地元の素材を使ってアクセサリーや雑貨を手づくりしながら復興への確かな一歩を歩みだすという動きがはじまっています。たとえば石巻市牧浜地区。ここでは地元の山に生息する鹿の角と魚網を活用してアクセサリーを制作。制作開始から1年が経過した今では全国のショップの販売協力も得て確かな収益を生むに至っています。ほかにも福島県の会津若松市では伝統工芸の会津木綿をストールに仕立てたり、岩手県の大槌町ではひと針ひと針、丹念に地元ゆかりの「かもめ」のデザインを「刺し子」によってコースターにしてみたり……女性たちのものづくりは、一人ひとりの日々の暮らしに小さな経済的豊かさと大きな精神的満足をもたらしているようです。
今、こうした被災地の制作現場は40にものぼり、そこでは日々200を超える多彩なものづくりが行われています。「東北マニュファクチュール・ストーリー」は、被災地でのこうしたものづくりの様子を貴重な文化遺産としてアーカイブしていくプロジェクトです。しかし、言うまでもありませんが、通販カタログや百科事典のようなアーカイブの仕方を目指しているわけではありません。本当に伝えたいこと、遺していきたいのは、一つひとつの制作現場で様々な人々によって紡がれる物語です。
クオリティが高いとは言えないけれどみんなの目を留めるものがあります。際立った個性があるわけではないのに売れるものがあります。なぜなのでしょう? その理由は、そうしたものたちが人々の豊かな物語の中で作りあげられたからだと実感しています。「東北マニファクチュール・ストーリー」は、丁寧な取材によってその実感をより確かなものとして伝えていきたいと思っています。
一度訪ねた現場がたとえば2年後にはどうなっているでしょうか?きっと物語は私たちの想像を超えて、いっそう豊かに紡がれているにちがいありません。「東北マニュファクチュール・ストーリー」を通じて多くの皆様に多くのものづくりの現場に想いを巡らせていただけたら……さらには、年を経るごとに震災の報道機会は減少し、それに伴い人々の記憶も薄らいでいきがちですが、このプロジェクトとともにこれからも被災地に目を向けていただけたら……これにまさる喜びはありません。
東北の復興の物語を、ものづくりの現場から伝えいくプロジェクト「東北マニュファクチュール・ストーリー」。このページをお読みいただいた皆様には、今後ぜひこのサイトの定期的なチェックをお願いします。そして、もし取材記事を通じて共感され、なにか力になりたいと思われたら、積極的にお問い合わせいただけたら幸いです。現場だけの力で乗り越えられない壁が、皆様とつながることで簡単に乗り越えることができる……そのようなことがまだまだきっとあります。現地と皆様をつなぎ、そこから新たな物語が紡ぎだされていくような、そんなメディアに育てていけたらと願っております。ぜひお力添えください。
東北マニュファクチュール・ストーリー実行委員会