日本を支える子どもたちを、東北から送り出したい|森の図書館
「亡くなった大切な人に思いが伝えられるように」と自宅の庭に置いていた電話線がつながっていない電話ボックス「風の電話」がきっかけで、大槌町浪板に石造りの小さな図書館が建った。花の匂いをかぎ、鳥の声に耳をすませながら本を読んでほしい-。佐々木格さん(67)はそう願う。
報道を通じて、風の電話を知った被災者や全国のボランティアが訪れるようになった。「ようやく別れを告げられた」。ボックスの中に置かれたノートには、そんな言葉が並ぶようになった。2011年6月、風の電話のことを知った東京の出版社を創業した藤森建二さんが佐々木さんの元を訪れた。自然に囲まれた環境を「子どもたちのために生かそう」と2人で図書館の開館に思いが至った。
もともとギャラリーにしようと、庭の一角に石を積み上げていたコテージを図書館にすることに決めた。ボランティアたちと一緒に急ピッチで作業を進めた。本は藤森さんのほか、佐々木さんの知人、活動を知ったボランティアらから寄贈を受け、約1千冊を集めて2012年4月にオープンにこぎつけた。
2階建て約40平方メートルの建物はすべて手作りだ。開館後、全国から「図書館に置いてほしい」と送られ、蔵書は約4千冊に登る。1階には写真集や画集、新書、文庫本がそろい、談話用のテーブルが置かれている。2階は絵本や児童書が中心だ。子どもたちが好きな姿勢で読めるようにカーペットを敷き、ソファを備えている。